加賀野井秀一 『20世紀言語学入門 −現代思想の原点』 講談社(講談社現代新書)
町田健 『コトバの謎解き ソシュール入門』 光文社(光文社新書)
町田健ほか(編) 『言語』創刊25周年記念別冊 言語学大問題集163 大修館書店
著者: 大津 由紀雄
発行社: ひつじ書房
発行年: 2004(新装版)
レベル: 易(小学生向け)
備考: 誕生日のプレゼントにもらった
レベルのところに書いたように、これは子供向けに「ことば」(日本語など)について説明した本だ。語り口も優しく、イラスト豊富で気楽に読める。
とはいえ、侮ってはいけない。「は」と「が」の問題、「じぶん」の用法など、日本語学のエッセンスがつめこまれている。連濁(「にせたぬきじる」と「にせだぬきじる」の違い、分かります?)に至っては、なんと東大院の入試で出たのでびっくりした。息抜き気分で一度目を通しておくとよいだろう。
編者: 亀井孝、千野栄一、河野六郎
発行社: 三省堂
発行年: 1995
レベル: 大学図書館にて使用
備考:
言語学を専攻する人間でこの辞典を知らなかったらモグリだろう。数千ページに及ぶ、巨大な言語学の辞典である。
たいてい大学図書館においてあると思うので、分からないことがあったらこれで調べるとよい。ただし、記述の仕方が用語と1対1に対応する用語を載せているわけでないので、簡便さを求めるなら英語学要語辞典の方がいいかもしれない。
もちろんこれは図書館で使うものであって、自分で買う必要は特にない。5万円だから欲しくても買えないし……。
〈2006年8月31日追記〉 「認知言語学・文献案内88」(pdf)にこの本が載っていた。
著者: 黒田龍之助
発行社: 講談社(現代新書)
発行年: 2004
レベル: 易
備考: 人に薦められたような、人に薦めたような……
言語学の入門の入門、といったところか。「言語学って何?」という質問から答えてくれる。そんなに難しいことは書いていないので、初心者にはいいが、これだけで院入試に立ち向かうには無理がある。3年生までに読んで欲しい本。(私は4年で読んだが)
〈2006年8月31日追記〉 「認知言語学・文献案内88」(pdf)にこの本が載っていた。「『言語学とはおおよそ何をするか』に答えようとする本」と紹介されている。
著者: 加賀野井秀一
発行社: 講談社(現代新書)
発行年: 1995
レベル: 易
備考: −
ソシュール(「一般」言語学)からチョムスキー(生成文法)まで、20世紀の主要な言語学者について言及した本。通読すれば大まかな言語学史の流れが分かる。
この本に載っている人名(ソシュール、ヤコブソン、サピア、ブルームフィールド etc.)を知らずに言語系の院を受験しようなんてお話にならないので、言語学史もしっかり勉強してください。
入試では直接人名を聞かれることは少ないのですが、解答に「○○は〜を主張したが、それは××で……」と書けるに越したことはありません。『言語学大問題集』でもそういう解答が多かったし。
ちなみに私の勉強法は、この本に出てくる主要な言語学者について調べてノートを作って、それを時々見返していました。大学院に入ってからもこれらの学者の名前は耳にするので、今でも役に立っています。
著者: 町田健
発行社: 光文社(光文社新書)
発行年: 2003
レベル: 易
備考: −
言語学の始まり(古代ギリシャ)からソシュールまでを概観する本。
語り口が平易で、また難しい専門用語もそれほど飛び出さないのでとっつきやすい。ソシュール以前(特に青年文法学派よりも前)は最近はあまり聞かれることがないようだが、押さえとくにこしたことはない。言語学やるなら先人の業績を押さえといた方がいいだろうし。
なお、同じ著者による『ソシュールと言語学』(講談社現代新書)の方はソシュール以後を概観しているので、2冊を併せて読むと言語学の流れをほぼ通観したことになる。
著者: 安井稔
発行社: 開拓社
発行年: 2000
レベル: 普通
備考:
タイトルから英文法の歴史でもやるのかと思ったら、実は構造主義(サピア、ブルームフィールド)と生成文法(チョムスキー)が中心。
決して楽に読める本ではないが、各項目の解説が詳しく、また引用も多いので興味深い。言語学史を通観した後に読んでみると知識が深まるのではないだろうか。
余談だが、英文法の歴史を知りたい人は渡部昇一『英文法を知ってますか』が役に立ちます。
この本、ギリシャ語がちゃんとギリシャアルファベットで書いてあって、古典ギリシャ語をやった身としては嬉しい限りなのだが、私が持っている版ではスペルミスが散見されるのが残念。(アクセント「′」と気息記号「’」の違いなんて普通は分からないだろうから、こんなことにこだわっても仕方ないんだけど)
〈2006年7月6日追記〉 この本は『わが国の英語学100年』の「英語学史」の章(p.45)で紹介されていた。
編著者: 町田健、籾山洋介、滝浦真人、堀川智也
発行社: 大修館書店
発行年: 1997
レベル: 難
備考: 先輩から代々引き継がれてきたものをもらった
まず最初に言っておくと、この雑誌(別冊)は残念ながら品切れ(2006年6月現在)。図書館や古本屋で見つけたら要チェックである。
言語学の各分野に関して、有名大学院(東大、上智、京大など)の過去問と詳細な解説を収録したもの。勉強すべき参考書まで載っていて、鬼に金棒。
かなり難しくて最初は挫折しそうになるけれど、このレベルが解ければどこの大学でも受かりそうな気がする。
大修館のホームページによる説明
大修館書店ホームページ 燕館
〈2006年5月21日追記〉 Webcat(大学図書館蔵書データベース)で調べたところ、26箇所の大学図書館に置いてあるようです。そちらにコピーしに行かれるのも手かも。ただ、所蔵場所によっては部外者が入れない場合もありますので、図書館に行かれる前に各OPACで所蔵場所を確認した方がいいと思います。
Webcat 検索結果
著者: 池上嘉彦
発行社: 岩波書店(岩波新書(黄))
発行年: 1984
レベル: 易
備考: −
「記号論」と銘打っているが、「シンボル・アイコン・インデックス」「言語の線状性」など色々な言語学の基本概念を勉強することができる。言語学を本格的に学び始める前にウォームアップとして読むといいのではないだろうか。学者や理論の名は挙がっていないので言語学の専門書で確認する必要はあるが、入門なのでその方が却ってとっつきやすいのではないだろうか。
入門とのことでかなり易しく書かれていて、背景知識がなくても容易に理解できるだろう。もちろん、言語学の知識があれば「これはあの学者の○○という説だな!」と分かるのでより深く読める。