大津由紀雄 『英文法の疑問 恥ずかしくてずっと聞けなかったこと』 NHK出版
マーク・ピーターセン 『日本人の英語』 『続 日本人の英語』 岩波書店
ロス典子、モーリス・タック、ピーター・ロス 『ネイティブの感覚で前置詞が使える』 『ネイティブの感覚でもっと前置詞が使える』 『ネイティブの感覚でもっともっと前置詞が使える』 ベレ出版
木村ゆみ、吉田佳代、Christian Burrows 『IELTS実践トレーニング』 三修社
編者: 松田徳一郎 ほか
発行社: 研究社
発行年: 1999(第2版)
レベル: −
備考: うちの大学で英語を専攻するとみんな買わされるようだ(持ってないと先生に怒られます)
わざわざ載せるのをためらってしまうくらい有名な辞書。大学で英語を専門にする人は必携。また、何を専攻するにしても、学部3〜4年や院になると自分の専門の論文を英語で読むことが増えるので、語数の多い辞書は必須となる。(ようするに大学生必携ってことになるのか?)
これは一般辞書(←→学習辞書)なので、意味と例文くらいしか書いてなく、『ジーニアス』や『ライトハウス』といった懇切丁寧な学習英和辞書に慣れた人の目にはぶっきらぼうに映るかもしれない。でもその分収録語数が桁違いに多く、27万語も入っている。持ち運ぼうと思えば運べるサイズでもあるし(1kgもあるけど)。
この辞書の魅力の一つは、ほぼ全ての語に語源が示してあることである。意味不明なスペルも、語の成り立ちを見ると覚えやすくなる(気がする)。最近見たのだとsyllogism「三段論法」というのがある。スペルを眺めただけではさっぱり分からないが、「ギリシャ語: syl ← syn- "with", logos "reason"」との説明を見るとすっきりした。ちょっと感動。たぶんもう忘れない。
あと、語源欄の超マニアックな使い方としては、古英語(初級)を読んでいて、意味はなんとなく推測できるが見出し形が分からない場合、その意味にあたる現代語を引くと古英語での形が出ていることがある。
なお、リーダーズは電子辞書にも入っているから、そっちを購入するのもいいと思う。電子辞書には大概『リーダーズ・プラス』も一緒に入っているし。『プラス』の方は文学作品や人名の紹介が充実しているのが魅力だ。あと、英語を専門とするなら『英和活用大辞典』が入っているもの(2006年版だとSEIKOとか)を選んだ方がいいでしょう。
で、私は紙と電子辞書のどちらを使用しているかと言うと……両方である。学校などでは軽い電子辞書を持ち歩き、家では紙の辞書を引く。引いた単語に赤線を引いてチェックしていくのが楽しいのだ。
〈2006年7月6日追記〉
『リーダーズ・プラス』は『わが国の英語学100年』の「特殊辞典・コンコーダンス・グロッサリー」(p.123)にも紹介されている。
〈2007年2月1日追記〉
柴田元幸氏『生半可な學者』収録の、辞書に関するエッセイ「愛なき世界」にて、『リーダーズ』のことが言及されていたので引用します。
”...僕のように現代アメリカ小説と関わることが多い人間にとっては、『リーダーズ英和辞典』(研究社)はまさに「聖典」である。
中辞典よりやや大きめ、という程度のサイズでありながら、この辞典に収められた情報量は驚異的である。ほかの大型辞典をいくつひっくり返しても載っていなかった語句が、よく見たら手元の『リーダーズ』にあった、という経験も結構多い。
語彙が多いだけでなく、説明も概して丁寧である。<中略>これなら素人でも「とりあえずわかった」気になれる。
というわけで、たいていの文章は『リーダーズ』一冊でひとまず間に合ってしまう。僕が王様になったら、まっさきにこの辞典を作った人たちに勲章を贈りたいと思う。”
(『生半可な學者』pp.40-41)
著者: 江川泰一郎
発行社: 金子書房
発行年: 1991(改訂3版)
レベル: 易
備考: 英文法(大学)の授業で紹介
これまた有名な英文法書。大学受験必携の書と言われているが、レベルが高いので、大学や院でも文法が怪しいところがあったらこれで引くといいだろう。1,785円と値段も手ごろなので本棚に置いておきたい。
斎藤兆文『英語達人塾』に「英文法書が眠っていたら読み返して理解するといい」と書いてあったから、英語達人になるにはこの本に載っている文法事項くらい全部押さえておかなければいけないようだ。(私はまだまだです……)
だいぶ歴史のある文法書のようで、東京外国語大学教授(2006年5月現在)の浦田和幸先生も言及なさっている。
東京外国語大学 教員総覧 −浦田和幸
東京外国語大学教授(2006年5月現在)馬場彰先生のホームページにある「英語学文献案内〈記述英文法〉」でも紹介されています。
馬場研究室 英語学文献案内
〈2006年7月6日追記〉
『わが国の英語学100年』の「統語論」(p.91)でこの本が紹介されていた。やはり、受験参考書だとなめてかかってはいけない。
〈2007年3月7日追記〉
行方昭夫『英文快読術』(1994年発行)にこの本への言及があったので、抜粋します。
”最後になったが、英文を読む際に必要な文法の知識は、これまた受験参考書に頼ればいいし、どの参考書も役立つと思う。しいて一冊挙げるとすれば、江川泰一郎『英文法解説』である。この本は1953年に発行されて以来、二度の改訂を経て、現在のものは1991年の改訂三版である。このように40年以上も多数の読者に愛用されてきたものであるだけに、およそ文法に関するいかなる疑問にも明快な答を与えてくれるすぐれた一冊である。私自身翻訳などに際して、およそ文法に関しては、この一冊で不足だったことは一度もない。”
(『英文解読術』p. 60)
著者: 大津由紀雄
発行社: NHK出版(生活人新書)
発行年: 2004
レベル: 易
備考: −
「恥ずかしくて聞けなかったこと」というより「常識すぎて疑問にも思わないが、実はよくわかってないこと」を鮮やかに解説してくれる。
例えば、modalityの概念とか、目的語にtoまたは-ingしか取れない動詞の理論づけとか(高校のときに教えて欲しかった!)、能動文と受動文の意味の違いとか、私は知らなかったことが多くて「へぇ〜〜」と思った。
でも、トリビアじゃなくてちゃんと役に立つ内容である。英語が得意な人も苦手な人も、一読すると何かしら得るものがあると思う。
ちなみに、著者の大津先生は『探検! ことばの世界』という本も書いておられる。こちらも言語学で院試を受ける人にオススメ(詳しくは紹介文をどうぞ)。
余談だが、上記の-ingとto不定詞の意味の違いは、大学のアメリカ文学の授業で役に立ったことがある。
Faulknerの Odor of Verbenaを読んでいる際、会話文でto killとkillingが出てきた。killingが「過去において行なわれた殺し」、to killが「未来において行なわれる殺し(具体的には主人公に殺人するよう促している)」を表しているんだとか。英語話者には、意識的にか無意識的にかニュアンスの違いが感じられるのだろう。
著者: 行方昭夫
発行社: 岩波書店(同時代ライブラリー/現代文庫)
発行年: 1994/2003
レベル: 易
備考: −
「英語がスラスラ読めるようになる」という本には眉唾物が多いが、この本は「正確に読むこと」の大切さを教えてくれる良書である。
前半は英語を正しく、楽しく読むための理論編であり、短文で読解力の確認ができる。5章は実践編で、精選された長文を読む。
英文には和訳がついているので、英文和訳の訓練にも使えるかもしれない。
なお、発行年が2つ書いてあるのは、私の手元にあるのは1994年発行の同時代ライブラリー版(絶版)だが、現在流通しているのは2003年発行の現代文庫版だからである。現代文庫版は未見なので、もし内容が改変されていたとしてもご了承願いたい。
著者: マーク・ピーターセン
発行社: 岩波書店(岩波新書(赤))
発行年: 1988/続 1990
レベル: 易
備考: −
タイトルだけ見ると日本人英語批判のようだが、実際は日本語(日本人)と英語(英米人)の発想の違いに触れ、日本人が犯しやすい英語の誤りを指摘してくれる有益な本である。
触れている内容は、冠詞の使い分け、前置詞、知覚動詞(findとdiscoverの違い)など、誰もが一度は目にしたような身近なものが多い。特に、『日本人の英語』にある「名詞に冠詞がつくのではなく、冠詞に名詞がついている」という発想は目から鱗だった。
この本は数多く出回っているようで、古本屋で100〜300円くらいで売られていることが多い。見かけたら買っておくといいだろう。
余談だが、この本は翻訳ではなく、アメリカ人の著者自らが日本語で書いている。ピーターセン氏は「私はあまり日本語がうまくない」と謙遜して(?)書かれているが、日本人の文章と比べても遜色ない。読点がやや多い印象を受けるかもしれないが、日本人でもこういう書き方の人もいる(例えば『日本語は年速1キロで動く』の井上史雄先生)。
著者: ロス典子、モーリス・タック、ピーター・ロス
発行社: ベレ出版
発行年: 1999/ 2000/ 2005
レベル: 易
備考: 大学受験対策に使用した本
イラストで前置詞の概念をつかもう、というシリーズ。本当にイラストしか描かれておらず、例文は巻末にまとめて掲載されている(CDにも収録)。
そういう意味で気楽に読める(眺められる)本なので、息抜きにでもどうぞ。
第1巻はon, in, atの3つに関して、第2巻(もっと)はthrough, beneath, intoなどより広範囲の前置詞を扱う。(3巻は未見)
イラストのいいところは、inは「内部」、onは「接触」といった基本概念がすんなり頭に入ることである。
これが分かるとin timeとon timeの違いも納得できる。
イラストは2〜3人で描いていて、それぞれ登場人物と設定(背景)があって面白い。
例えば、「若い女性とメガネの男性は恋人同士であるが、ヒゲ男が横恋慕している」、「帽子の少年は大金持ちの息子だったが、父親の浮気に腹を立てた母親と共に家出してしまったので、現在はホームレス」などなど。
どうでもいいが第2巻のイラストが某ゲームのキャラに見えて仕方がない。。。
著作権や肖像権?は大丈夫なのだろうか。
著者: 木村ゆみ、吉田佳代、Christian Burrows
発行社: 三修社
発行年: 2007
レベル: 普通
備考: IELTS対策
IELTS(アイエルツ)とは、簡単に言えばTOEFLのイギリス版のようなもの。
イギリスやオーストラリア、ニュージーランドに留学するときはスコアの提出を求められるし、アメリカでもTOEFLの代りに使えることがある(逆にTOEFLスコアをイギリスの大学に出してもいいようだが)。
全問筆記(スピーキングは1対1の面接)だが、14日間と比較的短期間でスコアが返ってくる。
一方、ポンドが強いせいか受験料はほかの英語の試験に比べて高く、2009年現在25000円以上かかる。
日本ではまだあまり馴染みのない試験のため、日本語の問題集も少なく、これはその貴重な1冊である。
Amazon.co.jpでの評価も高く、また某所の紀伊國屋に行ったらこの本しかIELTS関連がなかったので、一番ポピュラーなのかもしれない。
なお、IELTS関連書はたいていの本屋では取り扱いがないので、Amazonで探すのをお薦めする。
この本の構成は、最初にIELTSに関する簡単な説明があって、それからリスニング・リーディング・ライティング・スピーキングの練習問題と対策→予想問題3問。
予想問題が各セクションの後ろにあるので、模試として使うには少し使いづらいのと、スコアバンドの目安(問題集で何割取れたらスコアがどのくらいになるか)という情報がないのが欠点か。
参考までに私のスコアを書いておくと、リーディングは問題集回答率8.5〜9割で当日スコア8.0(ちなみにIELTSのスコアは最高9.0である)、リスニングは問題集回答率8割で当日7.0だった。
これは推測だが、総得点(Overall)は4セクションの平均を四捨五入した値、例えば6.6なら6.5で6.8なら7.0という計算のようだ。
なお、各種海外留学用奨学金に応募するには、文系だとIELTS7.0、理系だと6.5を求められることが多いようだ。
参考:JASSO [海外留学のための奨学金]
私の使い方としては、主に「型」を覚えるために使った。
リーディングはYES/NO問題の判断基準(「本文中にない」"NOT GIVEN"があるのがいやらしい)、ライティングやスピーキングは序論→本論といったライティングの基本の型といったように。
私はやらなかったが、ライティングとスピーキングは事前に何本か作って練習しておくといいようだ。(これをやらなかったせいか、どちらもスコアは良くなかった)
リスニングはディクテーションが大変なのを痛感させられ、直前に筆記体を速く書く練習もした(問題中に出てきた知らない単語を書き写す際に練習したので、ついでに単語も覚えられてよかった)。
著者: Wendy Sahanaya, Jeremy Lindeck and Richard Stewart
発行社: Oxford University Press
発行年: 1998
レベル: 普通
備考: IELTS対策
IELTSを受けなおす羽目になったため、上の『IELTS実践トレーニング』以外にもう1冊買うことにした。
このIELTS Preparation and PracticeはReading & Writing編(読み書き)とListening & Speaking編(聞く話す)に分かれており、ケチって読み書き編しか買わなかった。
なお、Listening & Speaking編には(当然ながら)CDがついている。
IELTSは日本ではマイナーすぎて英語の先生に聞いても「何それ?」の反応が返ってくることも多く(イギリス留学経験者なら分かるのだが)、本屋に行ってもIELTS本が全然無かったりするので、Amazon.co.jpのブックレビューぐらいしか頼りにならないのが頭の痛いところ。
今回も評価がまあまあ良かったので購入してみた。
結論としては、ReadingとWritingの第1問(グラフ問題)にはいいが、Writing第2問(意見陳述)には役に立たない。
また、欠点としてはAnswerが巻末にあったり問題の直後にあったり、最初の方の練習問題だとそもそもAnswerが用意されていなかったりして、ちょっと使いにくい。
当然ながら英語で書かれている上、IELTS自体の説明(手続きや当日の流れといったこと)はほとんど無いので、まずは『IELTS実践トレーニング』で感じをつかんで、さらに練習を積むならこれを買うのがいいのではないか。
Reading部門は、『IELTS実践トレーニング』とは別の着眼点が載っていたりして、参考になった。
全てではないが、Yes/No/Not Given問題は「〜と書いてあるからYes/No」「〜は書いてないからNot Given」という簡単な解説がついており、どの程度まで深読みしていいかの参考になった。(例えば「料理が置かれている」は「宴会をやる」の伏線になっているだとか)
前回より1.0上がって9.0になったので、少しは効果があったのではないかと思われる。
当日は15分余ってゆっくり見直しできたのも良かったのかもしれない。
Writingのグラフ問題のセクションは、書く前にアイディアをまとめるメモの取り方、使えそうな表現(「横ばい」「急上昇」といったもの)がまとめられている。
模範解答がおしゃれなフォント(MS WordのFrench Script MTに近い)なので少し読みにくいかもしれない。
Writing2(意見陳述)のセクションは抽象的なアドバイスが多く、じっくりやらないと効果が出にくそうだ。(このセクションの出題自体がそういう性質なのだろうが)
今回はスケジューリングを完全に失敗し、IELTS対策に1日しか割けなかったので、それで効果を出せというのも無理なのだろうが、案の定スコアは上がらず6.0のままだった。
とにかく時間が足りなくて、セクション2は結論部を書ききれなかった。
大学院留学の場合はOverall7.5かつ全てのセクションで7.0以上という条件を課すところも多いので、留学したい人は頑張ってください。
前回書いたOverall四捨五入疑惑(?)だが、今回はR 9.0 L 7.0 W 6.0 S 7.0で平均7.25だがOverallは7.5になったので、やっぱり四捨五入のようだ。
実は前回(Overall 7.0 : R 8.0 L 7.0 W 6.0 S 6.5)から1.5しか増えていないのだが、Overallで+0.5upというとそんなものなのだろうか。
噂に聞くところによると、資金があるならIELTS対策はブリティッシュ・カウンシルの講座を受講するのが一番効果的らしい。
知り合いは、受講後に受けたIELTSではWritingで9.0取れたといっていた。
前回と今回と少し手続きが変わっていたので、メモしておく。
2009年に受けたときはブリティッシュ・カウンシル主催だったが、2010年から英検が事務手続きを行なうようになったようだ。
受験票や結果は英検から送られてくるようになったし、受験票送付のために予めA4の封筒を郵送するのもなくなった。
受験票はA4の紙からワインレッドの封筒(端を切ると小冊子みたいになるやつ)に変更された。
受験申し込みも英検の専用ウェブサイトに登録して行う。(今までのものは使えない)
筆記の試験場所は前回と違うところだったが、英検になったせいかどうかは分からない。
当日の流れなどは特に変更無かったが、受験票に貼る写真がメガネ着用禁止になったことは注意が必要かもしれない。
普段メガネの人はメガネ無しでちゃんと証明写真を取れるのか疑問だが、スピード写真ではなく写真屋に頼めば大丈夫なんだろうか。